揉み作業を繰り返す煎茶に対して、抹茶の原料となるてん茶では揉み作業を行いません。
そのため荒茶製造にかかる時間は、煎茶が約3時間かかるのに対して、てん茶では1時間足らずです。

てん茶荒茶

てん茶仕上げ茶

抹茶

抹茶の原料となるてん茶の荒茶工程

摘採

摘採の20日以上前から茶園全体を覆います(遮光率98%)。このタイミングが、品質の良否を決定する大事な要件となります。現在、被覆は取り扱いの良さ、耐久性の強さなどから、ほとんどの茶園で寒冷紗が用いられます。
茶樹は前年の摘採直後に台刈りされ、1年かけて枝葉を伸ばし、地上1.2mくらいまで成長させます。被覆後、柔らかな新芽に適度な張りが感じられるころに、1本1本指でしごいて摘採します(こき摘み)。
本来は年1回の一番茶だけを摘採し、直後に台刈り(地上40cmくらい)して、来年の摘採に備えます。ただし、はさみ摘みの場合は、需要に合わせて年2~3回の摘採を行います。

送風・加湿

摘採した生葉を放置すると、ただちに発酵が始まり、熱をもちます。そこで、生葉の品質劣化防止・鮮度維持のために、湿度の高い空気を送って、水分の保持と呼吸熱の低下が図られます。

蒸熱(じょうねつ)

生葉の酸化酵素の活性を止め、冴えた色調で覆い香を引き立たせるため、連続式に流れる網胴回転攪拌型蒸機で、通常の煎茶よりも短い蒸し時間(平均20秒程度)で蒸します。

※抹茶の挽き色を濃くするときは、蒸熱の時間を長くします。

攪拌・冷却

蒸した茶葉は、高温のまま放置すると、色・香味とも悪くなるため、蒸熱の直後、風力を用い、ネットで覆った冷却用の散茶機(通称「あんどん」)の内部に吹き上げ、蒸し葉同士が重なり合わないように拡散させながら冷却します。

※一般に、あんどんは長いほど効果が大きく、高さは5~7m。

荒乾燥・本乾燥

170~200度の熱風で30分ほど乾燥させます。長さ10mほどの乾燥機の下部はレンガ造りの火爐となっており、茶葉は3~5層のキャタピラの最下部での急速乾燥後、最上階へ吹き上げられ、順次下に搬送されながら緩慢乾燥されます。この工程により、適度に過熱香気が生成され、香味の調和がとれるのです。

つる切り

乾燥後の葉の部分はほぼ乾いていますが、茎の部分は乾燥が進みにくいため、多くの水分が残っています。このため、つる切りで木茎分離を行い葉部と茎部(葉脈含み、骨と呼ばれる)を分けます。

再乾燥

茎や葉脈は水分が多いため、再度乾燥させ、さらに葉と骨を風力で分離させます。

合・梱包

1ロット分を合場で均一に合組し、大海に入れて出荷します(15kg程度)。

※合場(ごうば)
茶葉を合組(ブレンド)する場所の昔の呼び名。
※大海(だいかい)
お茶の取引で、荒茶を入れて運搬する大きな紙の袋。二重になった紙の間にビニールが挟まれています。